がんと脳梗塞

がんと脳梗塞。一見無関係に感じますが、実はそうではないのです。

なぜならば、がん治療中の患者さんが脳梗塞を発症することは稀ではなく、逆に脳梗塞を発症した患者さんにがんが見つかることもしばしばあるからです。また、海外ではがん患者さんの剖検(死因,病変などを追究する ために,死体を解剖,検査すること)例で約14.6%に脳血管障害の合併があり、その約半数は脳梗塞であったと言う報告もあります。

何故、がんと脳梗塞が関係があるのでしょうか?原因としてはいくつかあげられますが、そのうちの一つはがん自体が梗塞の原因となる事です。真性多血症や白血病、また悪性リンパ腫でも血管を梗塞することがあります。また、多発性骨髄腫でも、直接的な原因ではありませんが脳梗塞の報告があります。

また、治療自体が原因となる脳梗塞もあります。例えば抗がん剤治療で使われる事が多いシスプラチンでは心房細動が現れることがあります。その心房細動が原因となり脳梗塞が現れることがあるのです。また、肺や食道などの手術によっても心房細動が起こることがあると言われています。また、脳の近辺の放射線治療によって血管障害が起こると言う報告もあります。

がんを患っている方(担がん患者)の脳梗塞の発症率が高いかどうかについては若干の議論があるようですが、その発症の経緯については、がんの無い方と比較すると、かなり特異であると言えます。

そして、担がん患者さんに脳梗塞が発症した場合、QOLを決定したり予後を決定するのは、多くの場合がんでは無く脳梗塞になると言われています。

今はがんでも生きられる時代となりました。そんな時代だからこそ、脳梗塞には十分に注意を払ってくださいね。

続きを読む

肺がん検査の有効性の検証

1970年代の後半に、がんの臨床で有名なアメリカにあるメイヨークリニックを中心に、肺がん検査の効果を実証する実験がおこなわれました。45歳以上の男性喫煙者4500人を、胸部X線検査と喀痰細部検査をする群としない群に分け、その後の肺がんの死亡率を比較したのです。結果は死亡率に差が見られませんでした。そのことから、胸部X線検査や喀痰細胞検査では肺がんの死亡率低下には繋がらないとする説が広く蔓延し、メイヨークリニックでは肺がん検診を中止しました。

一方日本では、肺がん診断時より前の検診率を比較したところ、1年以内に検診を受けた場合は、28%の肺がん死亡率減少効果が認められたという報告があり、健診が無駄とも、非常に有効とも言えない状況でした。

しかし、その後腺がんが増えるなど肺がんの種類も変化し、また精度の高いCTによる検査方法が開発されて、小さながんも見つけられるようになりました。その結果検診の効果が認められるようになり、先述のメイヨークリニックも肺がんの検診を再開しています。

肺がんは特徴的な自覚症状がない病気で、症状が現れた時には進行している可能性が高い病気です。ですから早期発見、早期治療が重要になります。そのためにも胸部CT検査などの検査を受けることをお勧めします。

肺がん

続きを読む

腎臓がんの凍結療法

この治療法は4cm以下の腎臓がんに対して2011年の7月から健康保険適用になりました。高齢者や、他の疾患のために手術が困難な場合、手術を受けることを拒否する場合に行われます。

手術には、冷凍手術器と接続している長さ20cm、直径1.5mmほどの特殊な針が使われます。この針はマイナス185度まで冷却されます。

手術は局所麻酔で行われます。MRIで病巣を確認して、体表からがんに向かって針を刺していきます。そこで針を一気に冷やしてがんを凍らせて死滅させるのです。10分冷凍してから2分休憩し、また10分冷凍するという2回冷凍が行われます。治療は短期間で終了し、通常は1泊2日で退院できます。

1本の針で周囲2cmの範囲を凍らせられ、2本使えば3cm凍らせられます。針は最高で5本まで使えます。冷凍する範囲はがんの辺縁から5mm以上広くする必要がありますので、3cmのがんなら4cm冷凍する必要があります。但し、針のさせないような場所や血が止まりにくい場合この治療は出来ません。

凍結療法は、放射線や化学療法とは全く異なるメカニズムでがん細胞を壊死させるため、放射線や化学療法が効きにくいがんに対しても効果が期待できます。また、低侵襲(体の負担が少ない)ことも特徴のひとつです。放射線治療との違いとして、凍結部位に再発を来たした場合に繰り返し治療が行えるというメリットもあります。

腎臓がんのほかには、前立腺がんや肝がん、乳がん、肺がん、子宮頸がん等の治療として治験が行われています。

腎臓がんの分子標的薬 パゾパニブ(ヴォトリエント)

FDA(米国食品医薬品局)がオプジーボ(ニボルマブ)を腎がんに承認

腎細胞がんの新たな分子標的薬カボザンチニブ

続きを読む

肺がんの遺伝子治療について

遺伝子治療はいわゆる代替医療です。すなわち、科学的根拠を証明していない治療です。しかしながら証明出来ていないことと、効果の有無は別だと思っています。新しい治療法は最初はどれも科学的根拠が証明されていないのです。更に科学的根拠を証明するのには時間が必要なのです。でも証明を待っていられない患者さんがいらっしゃるのも一方の現実です。

以下の症例はある医療機関で行われた肺がんの患者さんの遺伝子治療の写真です。

66歳男性 遠隔転移無しと言う見立ての患者さんです。

shorei

もちろん、皆さんに同じ結果が出るわけではありません。

でもこのような効果が出る方がいらっしゃるのも現実です。更に言えばこの治療は標準治療を邪魔する治療でもありませんし、副作用も少なく患者さんにとっては低侵襲な治療とのことです。

一見良い事ばかりのようですが、残念ながらこの治療は自由診療です。費用は全額自己負担ですし、治療できる施設も多くありません。更に遺伝子治療と謳ってても実施施設により治療内容も異なります。だからこそどこで治療をするのかの選択が非常に重要になるのです。

遺伝子治療に寄らず、ご質問・ご相談があればお気軽にどうぞ。

ご質問のある方はこちらからお気軽に

がん遺伝子治療 その1

肺がんの第三世代分子標的薬AZD9291(TAGRISSO)

乳がんの遺伝子治療例

続きを読む

TAGRISSO(タグリッソ)-オシメルチニブが認可されました

優先審査品目として審査されていた肺がんの第三世代分子標的薬AZD9291(TAGRISSO タグリッソ)オシメルチニブが2016年2月29日に国内で認可されました。

適応は「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん」です。

タグリッソはEGFR阻害薬による治療に耐性が生じた患者にみられる「EGFR T790M変異」という新たな遺伝子変異を標的にするものです。

イレッサやタルセバなどのEGFR-TKIが奏効しても、ほとんどの症例で薬剤に対する耐性ができ病状が進行してしまいますが、この耐性化した症例の過半数にT790M変異がみられると言われています。このT790M変異陽性の非小細胞肺がんに効果を発揮する薬剤として期待されているのが第3世代分子標的薬のタグリッソ(オシメルチニブ)です。

今まではT790M変異陽性肺がんに対する治療薬は市場になかったため、日本肺癌学会が15年7月に同剤の早期承認を厚労相に求めており、同年8月に申請し優先審査されていました。EGFR T790M変異陽性の非小細胞肺がん患者数は約1万9,700人~3万5,300人と推測されています。

使用法は1日1回経口投与で用います。またT790M変異の遺伝子変異があるかどうかを検出するため、厚労省は、同剤の承認とほぼ同時期にコンパニオン診断薬も承認する方針です。

肺がんの遺伝子治療について

肺がんの第三世代分子標的薬AZD9291(TAGRISSO)

進行・再発の非小細胞肺がんに対して「オプジーボ」(ニボルマブ)が承認されました

続きを読む

肺がんの外科手術-縮小手術

肺がんの標準治療は、大きく分けて3つの方法があります。

切除をする外科手術、抗がん剤を主とした化学療法、放射線照射を行う放射線療法です。

その中でも切除によって根治が可能の場合に選択されるのが外科手術です。標準治療ではがんのできた肺葉を丸ごと取る肺葉切除が行われます。その場合には、リンパ節転移している可能性を考慮してリンパ節も切除します。最近ではリンパ節切除は最小限で済ますという方法も考えられていますが、肺がんは進行が速くて転移しやすいため、安全を考えて広範囲のリンパ節を切除するのが原則です。

しかしながら、切除部分が大きいと、術後の肺機能の低下による呼吸障害が見られることがあります。

その為に肺を出来るだけ温存して、切除する部分を出来るだけ狭い範囲にする方法で行われるのが縮小手術です。

基本的には非小細胞がんで病気はⅠA期で、がん細胞が2cm以下と言う、ごく早期のがんを対象としています。しかしながら2cmを超えていても肺機能の悪い方や高齢者、あるいは持病がある方に行われることもあります。

縮小手術には区域切除とくさび状切除があります。

区域切除はがんの有る肺葉の狭い区域を切除する方法ですが、リンパ節転移がないことが最低条件です。

くさび状切除は病巣のみをくさび形に切除する方法ですが、胸部CTで見たときに、すりガラス状の陰影が75%以上あり、がんの病巣が肺の外側三分の一以内にある事が条件となります。

この手術は手術後の呼吸機能低下が少なくて済むという結果が出てますが、しかし縮小手術は局所再発する可能性があります。

その為に、これらの手術は標準治療とはなっておらず、病院によっては行ってない施設もあります。行っている施設でも、主治医とよく話し合って手術法を決める必要があります。

肺がんのレーザー照射治療(PDT)

肺がんの遺伝子治療について

続きを読む

禁煙の肺がんリスク低減効果およびその他のメリット

巷間言われますように、喫煙による発がんリスクは高く、その中でも特に肺がんのリスクは非常に高くなります。逆に言えば、禁煙する事により、肺がんになるリスクを低減させることは大いに期待出来得ると言うことです。

しかしながら、禁煙してから肺がんのリスク低下が現れるまでに5年掛かり、禁煙後20年経過した時点でようやく非喫煙者と同等になるというデータがあります。

それをもとに出てきた意見と言うのが、「若い人は禁煙すれば肺がんリスクは下がり筋炎の効果を手にすることができるが、高齢になったら禁煙の効果を手にする前に寿命が尽きてしまうので、高齢(70代以降)になってからの禁煙はあまり意味がない」と言う論調です。

しかし禁煙による健康効果はがんに対してばかりではないのです。

米国肺協会は以下のように報告しています。

禁煙開始から20分で血圧は正常になり、8時間で血中の酸素濃度が正常になる。24時間で心筋梗塞のリスクが下がり始め、48時間で味覚や嗅覚が回復する。2週間から3か月かけて循環機能が改善され歩行が楽になります。1~9か月で咳や疲労感、息切れが改善する。

どうですか?短期間に効果が出ることも沢山あります。やはり禁煙すればしただけの効果が期待できそうですね。

肺がんの発症を防ぐためにも、肺がんを悪化させないためにも、肺機能の低下によって根治手術が不能になる状態を防ぐためにも、老後の生活をより快適に過ごせるようにするためにも、そして大切な家族のためにも、禁煙は何歳になってから初めても決して遅くはないのです。

たばこと肺がんの関係

受動喫煙(パッシブスモーキング)の害

肺がんの症状

続きを読む

気を付けたい喘息に似た症状の肺がん

肺がんのほとんどは、腺がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、大細胞肺がんの4種類で占められています。

しかしわずかですが、この4種類の組織型に入らない特殊な肺がんもあります。

特殊な肺がんの中でも、線様嚢胞がん、粘表皮がん、カルチノイドは、早期発見・早期治療により治癒する可能性の高いがんです。

カルチノイドは形と性格からいえば小細胞肺がんに似ていますが、転移などが小細胞肺がんに比して少ない腫瘍とされています。線様嚢胞がんと粘表皮がんは、唾液腺に発生するがんと似た組織型をしているがんです。

これらのがんはいずれも気管と、太い気管支から亜区域気管支までに発生して、気管支の内腔に発育していきますが、悪性度が低いので低悪性腫瘍と呼ばれており、早期治療により治癒の可能性が高いのです。

ただし、気を付けなくてはいけないのは、これらのがんは早期には無症状である事です。更にがんが大きくなって内腔が狭くなると空気が通りにくくなるので、ゼーゼー、ヒューヒューなどの喘鳴が起こります。このことにより、気管支喘息と間違われることも多く、気管支喘息の治療をしているうちに、がんの治療が遅れてしまうことがあるのです。

しかもこれらのがんは比較的に若い人に多くみられるので、それもがんが疑われない一因になってしまうのです。

喘息やかぜの治療をしても症状が改善しない場合、一度は呼吸器科の専門医に正しく診断してもらったほうが良いのではないかと思います。

肺がんの遺伝子治療について

続きを読む

肺がんの第三世代分子標的薬AZD9291(TAGRISSO タグリッソ)

非小細胞肺がんのうち、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子に変異があるタイプのがんはEGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)と呼ばれる薬剤を用いて治療が行われます。EGFR-TKIについては第一世代のイレッサやタルセバ、第二世代のジオトリフが日本では承認されています。ところが、これらの薬剤を使用して数か月から1年で「薬剤耐性」が生じて薬剤が効かなくなります。

耐性が起こるメカニズムでよく起こるのは次の2つです。

1つは、薬は結合するものの、EGFR以外の経路から増殖シグナルを伝えるようになってしまうタイプです。MET遺伝子とよばれるものが過剰に増殖し、がんの増殖シグナルを出す場合などです。

そして最も多く、EGFRの耐性を獲得した症例の50%以上に見られるのが、EGFRの遺伝子の特定の場所に遺伝子変異が起こり(主にT790M変異陽性)、薬剤が結合しなくなるタイプです。

このEGFR-TKIによる治療後に病勢が進行したT790M変異陽性の非小細胞肺がんに効果を発揮する薬剤として期待されているのが第3世代薬のAZD9291(TAGRISSO タグリッソ オシメルチニブ)です。米国では2015年11月にFDA承認をされており、国内でも優先審査品目に指定されていて、今年の3月には承認される見込みとなっています。

ただし副作用としては5~6%の患者さんに間質性肺炎が生じたようですので、注意が必要です。

この薬剤の登場により、EGFR-TKIを使用していて耐性が起きた後には、耐性の原因を特定するための再生検の重要性はますます高まっています。

TAGRISSO(タグリッソ)-オシメルチニブが認可されました

進行・再発の非小細胞肺がんに対して「オプジーボ」が承認されました

肺がんの遺伝子治療

肺がんの分子標的薬

続きを読む

進行・再発の非小細胞肺がんに対して「オプジーボ」(ニボルマブ)が承認されました

最近何かと話題になっている、免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ(ニボルマブ)ですが、この12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の治療に関して承認がされました。

ご存知の通り、オプジーボ(ニボルマブ)は根治切除不能な悪性黒色腫に関して承認をされていましたが、今般上記が追加となりました。

ただ、「国内での治験症例が極めて限られているため、製造販売後、一定数の症例に関わるデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」とありますので、日本人に対する効果や副作用などの集積はこれからとなるようですね。実際に少しずつですが副作用の報告もされ始めているようです。中には重症の筋無力症や筋炎のような重篤な副作用の報告もあるようですので、注意は必要です。しかしながら、非常に期待の高い薬剤が承認されたことは喜ばしい事ではないでしょうか。

一方でオプジーボは薬価が非常に高いのでも有名です。「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に使用する場合は悪性黒色腫に使用する場合よりも用量・使用頻度共に多くなります。用量は1.5倍となり点滴の頻度も悪性黒色腫が3週間間隔に対して、肺がんの場合は2週間間隔となります。

その為に1回あたりの薬価が体重60kgの方で130万円以上ともなり、年間で約3,460万にもなります。もちろん、自己負担は高額療養費制度を申請することにより随分と抑えられますが、それでも高額である事は間違いがありません。

健康保険でのがん治療はそんなにお金がかからないと言う方もいらっしゃいますが、そうとも言えなくなっているのが現実ではないでしょうか。

あきらめずにがんと向き合うためにも、これからはしっかりとした準備が必要となりそうです。

進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の効果

抗PD-1抗体 オプジーボ(ニボルマブ)について

肺がんの遺伝子治療の症例

資金準備の話

続きを読む